Toshio Kamitani Design

日本美術の底力 山下裕二[著]

2022/01/21

知らないことは財産である

絵を観る時に事前に知っていて観るのか
全く知らずに観るのか?
たとえばクラシック音楽を聴く時
知っている楽曲をどう演奏するか?という楽しみがあるし
それより初めて聴いてそれを理解できる耳を持ち合わせていない
ジャズでは特にそうだ
皆が知っているスタンダードをどう解釈して演奏するか?
それが楽しみでもある
「ジャズに名曲なし 名演あり」という言葉があるように…

では絵画はどうか?
教科書などで知っている名画といわれている作品がくると
それを観たくなり人が殺到する
まるで観ないと駄目といわれるのを恐れるかのように
そしてその絵を観て(観た気になって)感動し
人に「観たよ!」と言いたくなる
自分も含めて多くの方はそういう鑑賞の仕方をしているのではないだろうか
知っているから観る 
知っている状態で観る 
知っているから理解できる

その知っている状態で観ることは正しいのだろうか?
無知識で丸腰のまま作品に出会うことを諦めてはいないだろうか?
自分の感性を信じて観るということを拒否していることにならないか?

「何かを知ってしまうと知らない状態には二度と戻れない」

と美術史家の山下裕二氏は言う
若冲を発掘したアメリカ人のプライス氏などはまさに
日本人が見向きもしなかった作品を無知識の状態で評価しているのだ

「何も知らない状態で観る」ことはふらっと入ったギャラリーで可能だ
今年もそんな真っ新の状態で作品に出会おうと思う

Kamitani Toshio